わずか6センチの名刀。

七百年分の快楽をお楽しみください。

人名のような読み仮名
キクイチモンジ

銘を「菊一文字」という。「キクヒトモジ」ではなくて、「キクイチモンジ」と読む。口に出してその名をつぶやけば、鬼でもなんでも切れそうな気がしてくる。河原町三条の入り口から三条名店街のアーケードをくぐり、歩くこと数十歩。堂々たる金文字の看板の下、ガラス張りのショーウインドウに大小の包丁やハサミがずらりと数千点並ぶ。天井の蛍光灯に照らされ、刃紋は深く美しい輝きを放っている。

「打刃物司」の名は伊達ではない。伝統七百有余年、始まりは後鳥羽上皇の御番鍛冶で刀匠の元祖とされる則宗に発する、という。あの新選組の沖田総司も愛用していたとかいなかったとか。まさしく歴史にその名を刻む名刀だ。そんな「菊一文字」の、もっとも小さい刃物がこの爪切りである。

つ、爪切りに、
包丁と同じ鋼?

 一度爪を挟めば、絶対にパツンと切り落とす。恐ろしいほどの切れ味だ。もうそれは、ある種快楽とも言えるだろう。それもそのはず、店主が「包丁と同じ鋼を使っていますから、よく切れますよ」と、こちらを見てニヤリと笑った。

キューリなものは
やはりポーチに入る

全長わずか6センチほどながら、墨痕鮮やかな「菊一文字」の銘と鍛冶の紋であるクツワ印が彩る。これがまた憎らしいほど愛らしい。まさにキューリなのだ。 人さし指にも満たないくらいの、それは小さな武士の魂。そっとポーチに忍ばせて、ここぞの時に使う女子も多い。


打刃物司 菊一文字 京都本店 
京都市中京区三条通寺町東入石橋町14
075-221-0077
11:00〜19:00(日曜は12:00~)
木曜定休
https://www.kikuichimonji.co.jp/

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