ダジャレをビジュアル化。

ダルマさんがころんでビックリして目が出た、ということでしょうか。

かの天龍寺の
コミカルなダルマ

 四条大宮から嵐電に揺られること、およそ25分。終点の嵐山駅を降りるとすぐに「臨済宗 大本山 天龍寺」の石柱が目に留まる。始まりは古く室町時代にまで遡り、作庭家として枯山水を完成させた夢窓疎石を開祖とする。疎石の手になる境内の曹源池庭園は、世界文化遺産にも選ばれている。禅寺の大本山が7つもある古都京都でも、名実ともに代表する寺だ。

 その天龍寺で年間1万個超が授与されるという人気のお守りが、ビヨヨーンと「目が出るダルマ」である。そのコミカルさと、先に述べた由緒ある禅寺とのギャップがたまらない。

「目が出る」は「芽が出る」。
何度となく楽しむダジャレ。

 そもそも「ダルマさん」で知られる達磨大師は、禅宗の始まりとなった実在の高僧である。ゆえに禅寺にとってダルマは、なにより大切な存在だ。

 そういうありがたいダルマさんを指で挟んで、ちょっと傾ける。するといきなり両目から細い黒目が飛び出す。意表を突くとはこのことだ。傾きを戻せば、目玉も引っ込む。ここで大半の人が再びダルマを傾け、目玉が飛び出る様を見てしまう。場合によっては、数回繰り返すだろう。出たり入ったり、ダルマの目玉は滑らかに動き続ける。ただそれだけの単純なことが、妙に癖になる面白さだ。これはシュール……いや、キューリである。

さらにまだエンタメが!
上穴からは龍。

 目が出ただけで話は終わらない。刮目すべきは、ダルマの頭に空いた穴である。片目をつむって穴を覗けば、そこに天龍寺法堂の天井画「雲龍図」が広がる。「現代の琳派」とも呼ばれた日本画家加山又造氏の筆による八方睨みの龍が、ダルマの中で精細に再現されている。ステイホームのご時世でも、ダルマを覗けば京都旅行の風情が楽しめる逸品だ。小指の先っぽほどのこのダルマで、一体どこまで喜ばすつもりなのか。恐るべし天龍寺。七転八起、我慢の時を耐えてこそ再起の時は訪れる。面壁九年、達磨大師の教えが今いよいよありがたい。

・「目が出るダルマ」のお守り。大きさ約1.5センチ、重さ約5グラム、500円。


天龍寺 
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
075-881-1235
8:30~17:00
http://www.tenryuji.com/

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